「プチ離島ブーム」到来か!?
今夏の船客 全島で増加
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白い砂浜と青い海がまぶしい泊海水浴場。岩に囲まれている波の穏やかな入り江が特徴で、子どもも安心して海水浴を楽しめると、家族連れなどに人気だ
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レンタサイクルで埋め尽くされる泊海水浴場駐輪場(写真提供=いずれも式根島観光協会)
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八丈島で来島者の増加が見られたこの夏は、船客が主体となる伊豆・小笠原の他の島でも増加傾向は顕著に現れている。かつての離島ブームには届かないが、「プチ離島ブームの到来では」との声も聞こえてきた…。
東海汽船によると、この7、8月に客船や高速船を利用した人は21万4286人で、前年より1万9302人増えた(対前年比110%)。東海汽船をはじめ関連各船舶会社の離島便も全航路で昨年を上回った。
伸び率では八丈島が最も大きかったが、ほかでも白い砂浜で風光明媚な新島、式根島、神津島の3島は特に人気が高まっているようだ。
東海汽船広報によれば、今夏についてはお盆など特に利用者の多い時期に天候に恵まれ、欠航がなかったことが大きかった。また、年間を通して利用者は増加傾向にあり、同社で企画している各種船旅のツアーも反響が大きいという。
インバウンドに関しては、少人数のグループは増加しているが、有名観光地などにみられる50人を超えるような大人数の団体はほとんどなかったという。
民宿を中心に約30軒の宿がある式根島はこの夏、離島ブーム以来の盛り上がりを見せた。
観光協会によると、東海汽船の実績以上に、来島者個々の宿泊数が増えたことが大きかった。「狭い島ですが、2泊は普通で、3泊する家族連れも多くいた。レンタサイクルも足りず、食事処は2時間半待ち、お土産物もすぐに売り切れました。商店主などは離島ブーム以後の数十年でも最大の売り上げがあったと話していました」という。
新島─式根間を1日3往復する村営船「にしき」の利用者も前年より20%増。式根島に宿が取れないため、新島に宿泊して日帰りで式根を楽しむ客も多かったためだ。
「来島者数より、宿泊数が増えたところに注目したい。今後はいかに島に来た人に気持ちよく納得してお金を使ってもらえるか、受け入れが課題」と、同協会も前を向く。
新島観光協会は観光客の伸びの一因はメディアで多く取り上げられたことだと分析する。特に昨年末まで、東京オリンピックのサーフィン会場候補として、渋谷や新宿などの都市部で誘致キャンペーンを行い、それがもともとサーフィンのメッカだった新島の認知度アップを後押しした。楽天トラベルの「16年夏、人気急上昇の離島ランキング」では4位に入った。
神津島は特にキャンプ客の増加が目立った。同島には3カ所のキャンプ場(有料1、無料2)があるが、お盆時期などは宿の収容人数に限界があるため、キャンプ客は歓迎だという。
また、神新汽船の「フェリーあぜりあ」が下田から毎日(水曜運休)1往復しており、「車で島に遊びに来る」という新しい観光のスタイルも少しずつ定着してきた。
伊豆諸島航路初のフェリーあぜりあ
「車で島へ遊びに行く」
島観光の新スタイルに注目
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「フェリーあぜりあ」(上)と、同船のランプウェイから乗り込む乗用車
(写真提供=神新汽船)
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神新汽船は静岡県の下田港から利島、新島、式根島、神津島(1日おきに逆コース)をまわり、下田港へ帰ってくる航路を運航している。この7、8月の延べ利用客数は4832人で、対前年同期比28%増の大幅な伸びとなった。島民の足としてだけでなく、新たな観光ツールとしても期待される。
東海汽船の下田航路が廃止されることになったのが1977(昭和52)年。下田に地理的に近く、人的にも古くからつながりがある新島、式根島、神津島の島民などから運航継続の要望が出され、第三セクターで立ち上げたのが神新汽船だ。
運航しているのは伊豆諸島航路に就航する船としては初のランプウェイを装備したカーフェリーの「フェリーあぜりあ」(495トン、旅客定員240人)。14年12月の就航から約3年間で、車両約1300台を運び、利用者数も年々増えている。
積載できる車両は普通車で10台分。自動車の運賃はどの島でも同額で普通車で1万8000円(運転者1人の2等運賃3890円を含む)ほど。夏場は観光目的の利用者が圧倒的で、今年7、8月は195台を運搬したが、予約を断らざるを得ない状況だったという。夏場を過ぎると工事関係車両の利用が増える。機材を積んだまま、運べるのもメリットだ。
また、島民が家族やペットと共に愛車で本土に渡って旅行する楽しみ方も広まってきた。下田から高速を乗り継げば、都心まで3時間足らず。「本土で走るとなるとカーナビは必要で、高速道路も考えれば車の選択も変わるかも知れません」と同社。フェリーが島の暮らしに小さな変化をもたらしている。
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