入り口正面にイベント情報などを知らせるメニューボードがあったり、本と一緒に楽器が並べられたり──。旧来の図書館のイメージを一新する八高図書館が、校内のちょっとした癒しスポットになっている。
ディスプレイを手がけるのは4月から図書館担当になった司書教諭の吉岡恒平さん。「生徒に何か面白そうだなと感じて図書館に足を運んでもらいたい。今は場所を限定して一部飲食もOKで、お昼を食べに来る生徒もいる。固定観念にしばられないで、図書館で何ができるのか、当面はいろいろ試してみたい」という。
「前より敷居が低くなった」「本はあまり読まないけど、時々見には来る」と、少しずつ訪れる生徒が増えてきた。放課後も静かに勉強したいという生徒は私語がだめな自習室に。一方、勉強でわからないことを友だちに聞いたり、調べものをしたい生徒は図書館へという棲み分けができつつある。他の利用者に迷惑をかけないレベルなら、会話もしていいルールだ。
むしろ、この「会話する」が、新しい図書館のコンセプト。実際、話し声があちこちから聞こえる。吉岡教諭も図書館に来る生徒に積極的に声をかける。「生徒に本を読みなさいといって読むようになるわけではない。私自身それほど本は読まないですから。本の話題に限らずに、自然に素直な気持ちで生徒と話せればと思っています」。
文化祭でブックトーク
八高祭(9月25日)でも、図書館が開放され、古本市も、わざわざ図書館の中で店開きした。これも入場者に図書館をアピールする仕掛けだ。ぶっつけ本番ながら「ブックトーク」も企画し、3年生の図書委員3人が、集まった八高生や一般の入場者に自ら読んだお勧め本を紹介した。
小説「きいろいゾウ」(西加奈子著)を取り上げたのは佐々木南さん。「今注目している作家の本。関西弁が親近感がわく。ツマとムコの夫婦の物語で、同じ家に住む夫婦でも考え方が違うことがわかる。幸せだった二人の生活が、小説の後半はだんだんダークになっていくんですが、読み終わったあとは心が温かくなります。宮浮おいと向井理の主演で映画化もされている」と勧めた。
土屋文彦さんの一押しは「『レベルアップ』のゲームデザイン」(Scott Rogers著)。「ふだんやっているゲームも、制作側のことを知ると見方が変わって楽しくなる。文章や注釈にもユーモアがあふれ、イラストもわかりやすい。マジで読んで」と押した。
コミック「聲の形」(全7巻、大今良時著)を紹介したのは中山開さん。耳が聞こえない転校生・硝子へのいじめを題材に、ストーリーが展開していく。「コミックが単行本化された後、多くの賞を受けた。今年映画化され、『君の名は。』に続く人気。ぜひ見てください」と、同世代、同時代ならではの共感を伝えた。
一般参加者からは「いい本に出会った生徒が、SNSの『いいね』の感覚で本屋の手書きポップ風の紹介をすれば、もっと本を読みたくなるかも」との声もあった。
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