第55回日本学生科学賞(読売新聞社主催)の都大会中学生の部で、三原中サイエンスクラブの「壁を登る動物の足のつくりの研究」が最優秀賞に選ばれた。身近にいる昆虫やヤモリなどの足の構造、壁との接着点に注目し、詳細に観察した。同クラブのメンバーは佐々木東陽さん、大澤康太郎さん(以上3年)、笹本大心さん(2年)の3人。もう1点応募した論文「シロアリの研究」も努力賞を獲得した。
「国際地球観測年」の1957(昭和32)年に創設された日本学生科学賞は、理科教育に基づく中学・高校生の公募コンクールとしては、国内で最も伝統のある賞。今年の都大会には中学の部102点、高校の部41点の応募があり、最優秀賞に輝いた各3点が、中央審査に進む。
研究のきっかけは3月の大震災。困難を極めた原発事故の放水活動の報道を見聞きして、「人間が行けないのなら、無人で原発の壁を登り、放水などの活動ができるロボットがつくれないか」と思った。3人が目を付けたのが家の壁をゆうゆうと登る昆虫やクモなど。こうした身近な動物と同じつくりの足を持つロボットがあれば、今回のような事態に役立つのではと考えた。
最初に垂直な壁を登ることができる動物の観察から始めた。36種類の昆虫やヤモリなどが割り箸、ガラス棒、アクリル板を登る速度を計測。また、足の構造を顕微鏡を通してパソコン画面に写し、写真とスケッチで詳細に記録した。さらに顕微鏡写真から、足の接着部面積や静止状態での足幅をマイクロメーターから算出。1mgまで計れる電子天秤で体重も測定した。
その結果、ハエやクモのように密集した毛が生えているものと、ゴキブリなど吸盤を持つ動物は登る能力が高かったが、コオロギのように主に地表で生活している種類は、カギヅメがあっても垂直の壁を登ることができないことがわかった。
動物の体重と足の接着面積を測定してグラフ化すると、体重に比例して面積が大きくなることや、体長と同じ長さの足幅があれば安定することもわかった。データから換算して、20kgの体を支えるには総接着面積が0.32平方メートル必要だった。
こうした結果をもとにイメージしたのが、20cm四方の接着面がある足を8本持つロボット。接着面が密毛か吸盤かは今後の研究課題だという。
指導した川畑喜照教諭は「たくさんの動物が10cm登るのに何秒かかるかを繰り返し測定するのだけでも大変な労力と忍耐が必要。顕微鏡で観察した足の構造を細かくスケッチして比較するなど、基礎的なデータ収集が評価されたのでしょう」と話している。
努力賞「シロアリの研究」 実験副産物も大きな収穫
昨年から始めたのが「シロアリの研究」。穀物から燃料を造るバイオエタノールの研究が世界的に注目されているが、食糧難を招きかねないトウモロコシやサトウキビからだけではなく、八丈島で大量に廃棄される草や木を原料に、シロアリの持つ分解酵素を使って、夢の燃料ができればという研究だ。
が、最終目的のバイオエタノールの精製まではハードルが高く、昨年の実験は失敗。今年の再挑戦では、理科室で実際にシロアリを飼育し、蟻道ができる様子や食餌行動まで、詳しい生態を日々観察した。「シロアリは湿気を帯びた朽ち木が大好物なことや、餌を求めて巣から蟻道が伸びるスピードがよくわかった。家のシロアリ被害を防ぐためにも、島の人に実験成果を見てもらいたい」と3人。実験で得られた副産物も、大きな収穫だったようだ。
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