八高吹奏楽部は8日、4度目の出場となった東日本学校吹奏楽大会で悲願の金賞を受賞した。今春、鈴木孝助教諭が異動し、新しい環境の中での部活動となったが、部員が奏でる音楽はなおも進化を続け、その個性豊かな表現力は聴衆の心を揺り動かした。日々のたゆまぬ努力の積み重ねとチームワークでつかみとった快挙は、八高生をはじめ、後に続く島の小中学生、そして島民に大きな喜びと希望をもたらしてくれた。
よこすか芸術劇場で8、9両日に開かれた「第11回東日本学校吹奏楽大会」(各吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)。高等学校部門には北海道から関東・北陸まで、各都道県大会・支部大会で選出された18校が出場。八丈高校はじめ、5校が金賞を受賞した。コンクール部門では、都立高として初の金賞受賞の快挙だ。
8月の都大会から2カ月。9月は八高祭での演奏もあり、コンクールに向けた練習を再開したのは大会の2週間前。7日1便で上京後は、横須賀学院高校の施設を借り、鈴木教諭(都立つばさ総合高校)と、演奏曲『黄昏待ち』の作曲者の相馬孝洋さんが合流し、最後の仕上げを行った。短い時間でも生徒たちは持ち前の吸収力で、表現の質を高めた。「演奏を聴いて幸せな気分になった」。横須賀学院の顧問も同部のファンになった。
少人数の編成はどうしても音の厚みや迫力に欠けることから参加校のほとんどがフルの30人編成。17人編成の八高吹奏楽部は、いつものように奏者が舞台を動き回り、2つから3つの楽器を持ち替えるという独特の演奏スタイル。各奏者が曲想を理解し、ていねいに紡いでいった音の重なりは、圧倒的な表現力で会場の聴衆の胸に迫り、演奏後には大きな拍手が湧き起こった。
「吹奏楽の音楽的表現、特に限られた人数での表現の可能性について、新しい提案をし続けていることに敬意を表します」。審査員の後藤洋氏(作曲家)の講評だ。
今大会から演奏者の上限が35人から30人に変更された。小編成の学校のコンクールという位置づけがより明確になったことも追い風になり、過去3回の銅賞から、大きくステップアップした。
「まねできない曲の美しさ」
客席で生徒たちの奏でる音楽を聴いた前顧問の鈴木教諭は「八丈を愛して作った曲の美しさが際立っていた。自然の中で育まれた感性から生み出される澄み切った音色は、他のどの学校にもまねのできないものだと改めて実感した」と生徒の演奏を讃えた。
指揮も担当した相馬さんは「奇跡です。あり得ないことがおこった」と興奮を隠さない。「他校に比べ技術的に足りない部分はあったが、それをカバーする音楽性、音色の美しさが評価された。金賞は、これまでの積み重ねが実を結んだ結果。今年出場した生徒たちだけでなく、歴代の部員みんなで獲得したものだと思います」と相馬さん。
「私たちの音楽」誇りに
部長で2年生の新井洋子さんは「東日本という大きな舞台で、この『黄昏待ち』を演奏でき、私たちの音楽を聴いて感動してくださった方がいることを誇りに思います。こうした表現ができたのは顧問の先生方、卒業生の方をはじめ、多くの関係者や、日頃から私たちを支えて応援してくれた家族、友人、地域の皆様のおかげです。感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました」と部員を代表し、感謝の言葉を述べた。
顧問の戸田星良教諭は「部員たちには、心からおめでとう、本当によく頑張ったね、という気持でいっぱいです。スランプも経験しながら、それを乗り越え、本番では都大会の時よりもみな落ち着いていて、いい演奏ができた。8月の段階から一歩も二歩も成長したと感じました」と語った。
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