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第3470号  2011年(平成23年)1月28日金曜日


気象異変 なにかが変 天気に翻弄された野菜づくり 問われる地域の対応力
● ごみの値段 総務文教委ごみ勉強会(2)焼却炉のコスト 大規模改修か建て替えか
● 八丈島のタイガーマスク!
● 東西南北 アグフレーションを前に
● 探査犬導入は中止に 八丈富士ノヤギ駆除で 

● ヘルシーフェスタ開幕 2月6日まで無料接待中 アロエ&あしたば
● さわさわ 「近眼が条件!?」 森清耕一氏
アルバムから 八丈富士と旧測候所庁舎と
● 花の島づくりに貢献 10年続けた運動に区切り 空港ビル
● 白熱 武道始式 インフルエンザで地区対抗戦は中止
● イベント自粛 風邪感染予防で
● 声 ロードレース2題「八丈島での快感、三宅島でも!」「団体特典でさらなる発展を」

● かるたはカタル 食育編 三原中製作 「ん、なんだ? この味ニオイ くさやだね」






気象異変 なにかが変





 半年前の記録的な酷暑から一転、厳しい寒さとなったこの冬。天候不順で大きな被害が出た夏野菜に続き、秋・冬野菜も生育が遅れ、特産品のアシタバは収穫シーズンになってもまだ昨夏のダメージを回復できていない。温暖化の進行は極端に暑い夏や寒い冬を招くと言われるが、この1年はそれを実感させるものだ。誰もが「なにかおかしい」と感じるこの気象異変。柔軟に対応できる産業構造やライフスタイルが求められる。
 
 天気に翻弄された野菜づくり  問われる地域の対応力

残暑が長引き、秋口に蒔いたダイコンやハクサイは、発芽がうまくいかなかった。セロリなどの冬野菜も、年末からの低温の影響で生育が遅れがちだという。
 この1年、島の農家は天候不順に振り回されている。昨夏は、梅雨期の日照時間が極端に短いかと思えば、梅雨明けから雨がほとんど降らない酷暑となった。ベテラン農家が「経験がない夏だった」と驚いた。
 お盆前、アシタバの島内価格は1束1000円を超えた。悲鳴を上げたのは宿泊施設。最近は特産品を観光客に味わってもらおうと、「アシタバ料理」を1品以上は食卓に出すようになって、品薄になっても切らすわけにはいかないという。
 アシタバを主に生野菜として出荷する三宅島以北では、通年生産が可能な栽培体系がすでに確立されているというが、八丈島のアシタバ生産は加工向けが多く、収量が落ちる夏場の栽培は以前からそれほどさかんではなった。ここ数年は夏場の観光需要に応え、また、少しでも高値の時期の出荷を増やそうと、水海山などでの高所栽培も行われていたが、供給は追いつかなかった。今後も標高差を生かした高地栽培などへの取り組みは重要になる。
温暖化の傾向は、主力である観葉植物や切葉生産など園芸産業にはどう影響するのか。内地における農業生産現場も施設化が進んでおり、従来のような八丈島の立地的優位性は薄れつつある。さらに温暖化の影響で、都内の露地でも鉢植えや地植えのロベが越冬できるようになったという。リンゴやミカンなどの栽培適地が移動しているように、園芸においても適産地の地図が塗り替えられるかもしれない。
 これまで蓄積した経験やノウハウを、どのように生かして環境変化に対応していくのか。そうした柔軟性も産地としての今後の命運を大きく左右しそうだ。

 生息域変える高水温  順応性高い漁業も…

 昨年8月31日、神湊漁港の定置水温は過去最高の29.8度を記録した。8月の平均水温も71年の観測開始以来2番目に高く、魚種によっては生息域や水深が変わるなどの異変が目立った。
 自ら種を蒔き、育てる農業とは異なり、漁業は資源量や海況の変化など、常に自然条件に応じて漁業形態を変化させてきた。戦前、島の主力産業だったトビウオ漁も80年代以降は漁獲が激減して衰退、多くのトビ船が他の魚種へ転換。現在の主力漁業といえば、ひき縄のカツオ漁と底釣りのキンメダイ漁だ。
 10年ほど前まで八丈島の底釣りの主体はアオダイ、オナガ、メダイなどだったが、90年代になって釣れるアオダイが小型になり、メダイも市場価格が低迷した。これを転機に、それまで漁場が深くて効率的でないとされてきたキンメダイ漁への転換が図られた。
 といっても、カツオやキンメダイが毎年コンスタントに釣れるわけではない。その時々の漁獲や市場の動向を見ながら、対象魚種を選択していけるのが順応性が高い八丈島の漁業スタイルだが、高水温などの環境変化がさらに激しいものになると、対応も厳しくなりそうだ。

 豊かだった沿岸の海

 過去30年間の八丈島におけるトコブシ、テングサの生産高のピークは、トコブシが85年の1億1425万円(水揚げ量39トン)、テングサは88年の2億1454万円(同667トン)。かつての沿岸の海がいかに豊かな幸をもたらしていたかがわかる。
 いずれも90年頃から漁獲が減少し、00年以降は漁といえるほどの水揚げはなくなった。沿岸水温の上昇も一因となって海の環境がテングサの生息に適さなくなり、海藻を食べるトコブシも減少したとみられるが、明確な原因はわからない。

(写真はセロリの葉が広がる樫立・中平の野菜畑)

 生態系、暮らしにもインパクト  移入種の大発生

 昨年、三原山のシイノキに枯れが目立ち始めたのは梅雨明けの7月半ばごろ。当初は梅雨時期の日照不足から、一転して猛暑となったことによる気象的なダメージと考えられた。その後、八丈支庁などの調査で全国的にブナ科・ナラ科の広葉樹に大きな被害が発生している「ナラ枯れ」とわかった。原因昆虫のカシノナガキクイムシが八丈島で確認されたのは初めてのことだった。被害樹が枯死しているかなど、被害の実態は今年の芽吹き時期にならないとわからないという。
 島の農業や森林に被害をもたらしてきた害虫は79年に異常発生したクワゴマダラヒトリ、91年以降に発生したトビモンオオエダシャクなどがある。移入路には流木や風に乗って運ばれてくるものと、人や物の移動で人為的に入ってくるものとがある。たどり着いた八丈島が生息環境として適していると大量発生するため、島の本来の自然生態系や産業、住民生活へのインパクトが大きい。

 02年ごろから坂上地域などで大発生を繰り返し、住民生活に多大な影響を及ぼしているのがヤンバルトサカヤスデだ。08年以降は永郷や西見地域にまで生息域を広げたが、昨年秋から今年にかけては全島で発生が激減した。「昨年夏の猛暑と干ばつは幼虫や亜成虫の生育に厳しかったのでは」との見方も出ているが、薬剤製造会社のサンケイ化学では「これほど極端に減った例はほかにないので、過去のケースはあてはまらない」と、特異な事例としている。
 八丈と同様に厳しい夏だった鹿児島県では、今シーズンはこれまでにない大発生で、11月にはJR指宿枕崎線でヤスデによって普通列車の運行が遅れるなどのトラブルも起きた。県の担当者によれば「確認された自治体も18から20に広がっている」と、生息域拡大の勢いは衰えていない。
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 今年以降、八丈島でカシノナガキクイムシ、ヤスデの?発生がどのようになるか注視したい。