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第3452号  2010年(平成22年)8月13日金曜日


● スダジイ立ち枯れ広がる カシノナガキクイムシが原因 三原山南西斜面 ベルト状に
● 3年ぶり、帰ってきた愛らんどリーグ!
● 八丈の戦時 初めて小説に 芥川賞作家の加藤幸子さん
●「人と太鼓の距離が近い島」 マウイとの太鼓交流 加藤雄太さんが企画
● 神津優勝、三宅も健闘 愛らんどリーグ2010
● 恒子ばぁ、クヨクヨせずに満100歳! 毎日、手が曲がるほど草を取っています
夏の味覚 コムロ解禁
レスリング団体 高校総体3連覇 霞ヶ浦高校
7月の来島者減少
● 富士中が銀賞 吹奏楽コン
● 垂戸で男性不明に
● 三根で飲食店半焼
● 寄稿 顕察上人の東漸寺を訪ねる 三根・細谷昇司さん
● たんしん 老人ホーム 夏まつり
● たんしん 大賀郷護神山・大神宮例祭
● たんしん 第28回タコスカップサーフィン大会
● たんしん 夏休みラジオ体操
● たんしん 八丈島Jr.ベースボールクラッシック


スダジイ 立ち枯れ広がる
カシノナガキクイムシが原因











 日本各地の森林でカシ、シイ、ナラなどブナ科の広葉樹が集団的に枯れる「ナラ枯れ」といわれる被害が広がっているが、その原因であるカシノナガキクイムシが八丈島で初めて確認された。被害が発生しているのは主に三原山南西斜面で、緑の森が紅葉したように茶色く変色したスダジイが点在している。被害が拡大すれば、水源機能の低下や土石流出が起きる可能性もあるとして警戒されている森林病害虫で、今後は関係機関による被害調査と防除対策が急がれることになる。
 支庁産業課によると、住民から最初の情報が寄せられたのは7月21日。林務係職員が現場に行って枯れた木の周辺を調べたが、この時点では原因の特定はできなかった。27日になって、被害樹木の根元付近に成虫が脱出した穴を発見。翌28日に町有林の木をサンプリングして持ち帰って調べたところ、中から体長5ミリ程度の成虫と幼虫が発見され、カシノナガキクイムシと同定された。

 被害が発生しているのは主に標高300メートルから400メートル地点の三原山南西斜面。特に中之郷の東京電力地熱発電所上の斜面や三原山無線中継所付近などでは、葉が枯れて茶色に変色したシイノキがかなりの密度で点在しているのがわかる。この標高に被害が集中しているのは、これ以上の高度になるとスダジイが減少するためとみられるが、標高の低いところや八丈富士側でも今のところ被害樹はない。
 同種は、1973年に発行された森林総合研究所の研究者の論文に、三宅島で採集したことが発表されており、最近では04年の同研究所の研究者による調査でも見つかっているが、当時は、被害は確認されなかった。今年は三宅島、御蔵島でも茶色く変色したスダジイが森の中に点在しており、同様の被害とみられる。都が都内で同種を確認したのは、今年度が初めて。
 八丈島への侵入時期は明らかではないが、支庁産業課でも「いきなりこれだけの範囲に広がることは考えにくい」としており、流木や木材に入って以前から島の中に移入され、ここへきて生息範囲を広げたものとみられている。

 大雨と猛暑が繰り返したり、日照不足の後に猛暑に見舞われると、弱った樹木に被害が発生するともいわれる。日照不足の後に猛暑が続いた今年の八丈島の気候が、木を弱らせた可能性もある。
 防除対策としては、マツクイムシ防除とも共通しており、枯死した木を伐採、焼却処理するほか、殺虫剤や殺菌剤の塗布や樹幹注入、燻蒸など。いずれも対症療法で、完全な駆除は困難だ。
 支庁の松川敦産業課長は「国も重要視している害虫で、防除事業には国や都の支援が得られる。できるだけ早く被害状況を把握して、町と一体となって対策をとっていきたい」と話している。
 スダジイは八丈島の照葉樹林帯を構成する主要樹種で、三原山の保水力維持、島の自然景観の根幹となる樹種。伝統工芸品・黄八丈の黒の染色にはスダジイの樹皮が使用されるのをはじめ、住民からご神木として大切にされている巨樹も多い。被害が広がれば多方面でそのダメージは大きなものになりそうだ。
 松川課長は「大きな木から被害に遭うという報告もあるので、町との協議の中でも住民に親しまれている巨樹は優先してムシが入り込まないような対策が必要という認識で一致している」と説明している。

 カシノナガキクイムシが八丈島の自然環境の中でどのような生活を送り、繁殖するのかなどの生態はわかっていない。
 一般的には6月下旬から8月に発生し、集中的・集団的に生きた樹木に潜入する。体に付着して大量に持ち込まれた共生菌(病原菌=アンブロシア菌)が樹体内に拡がると、樹木内の水流が阻害され、まもなく葉が変色して木が枯れる(時期は7月下旬から8月中旬までが多い)。
 林野庁によると98年に8府県278ヘクタールだった被害面積は、08年度には24府県1445ヘクタールと拡大している。被害樹種はカシ、シイ、ナラ類が主で、これまでにミズナラ、コナラ、アカガシ、アラカシ、ウバメガシ、スダジイ、マテバシイ、クリ、カシワなどで確認されているが、八丈島では今のところ、三原山山系のスダジイだけで被害が出ている。

 写真上から樫立・伊郷名付近から見た三原山、そのアップ。