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第3660号  2016年(平成28年)8月26日 金曜日


● 養和会が決定 養護老人ホーム 18年3月末で廃止 赤字続き 施設も老朽化
    建て替え方針一転
    地域包括ケアへ
    養護老人ホーム措置者推移(11〜15年度)
● 台風9号が接近 最大瞬間風速50.9メートル ネリ サトイモなど 農作物被害も
    観光にもダメージ
    熱低 台風 過密状態に
● 地熱応募8者 一次審査パス

● 福八子どもキャンプ 延べ200人参加 5年間のプロジェクト終える
    「薄れる危機感」
● 原発事故から5年 変わらぬ不安 住民間に溝も
● 読者から届いた夏のトピックス 
    大道中が八丈チームの遠征を応援!
    八高生の募金活動で大輪の花咲く!

● 社会は移り変わり歴史自体も現代文化の一部として変わっていく
      近世史を作った時代のフィルターの問い直しも大切
    幕末の小笠原諸島開拓を研究 ハーバード大学院生 近世史料八丈で調査
    スイス人ヨナス・ルエグさん 過去を学ぶ意味語る
● 全日空 6便運航で対応 空港ビル ロビー開放も お盆明け 海空路欠航で足止め

● 八丈島は人気スポット!? 音出せて、地元が協力的 花盛り 島外発のDJイベント
    定着した催しも
● 愛らんどリーグ 神津FCがV 
● レスリング審判 沖山功さん リオで五輪デビュー
● 沖永良部の笑顔がいっぱい! 島旅写真家 河田真智子さん

● たんしん 
     詩人アーサー・ビナード氏の講演会「ニッポンの『島』の意味が広がる!」 28日、商工会研修室で
     八丈島RAINBOWCUP2016フットサル大会 9月3日、4日、南原スポーツ公園サッカー場で
     映画会「リトル・マエストラ」 4日、町ホールで
     第12回ユニバーサルキャンプin八丈島 10〜12日、底土キャンプ場で
     第71回八丈島民大学講座 10、11日、七島信用組合2階で
     八丈島ソフトテニス大会結果
    

 

 

幕末の小笠原諸島開拓を研究
ハーバード大学院生 ヨナス・ルエグさん

近世史料八丈で調査

 


八丈町役場前で。ヨナスさん



 

 ハーバード大学大学院の博士課程で日本近世史を学んでいるスイス人のヨナス・ルエグさん(26)が7月15日、幕末における小笠原諸島開拓の研究で来島した。
 幕府による1862年の小笠原諸島開拓の際には、38人の八丈島民が移送された歴史がある。開拓が軌道に乗り出した翌1863年、イギリスの商人が薩摩藩士に殺害される生麦事件が発生し、薩英戦争が勃発する前夜、開拓者全員が本土へ送還されたが、明治時代に入ると、再び開拓が始まった。ヨナスさんは、早期の小笠原開拓の資料が見つからないかと19日まで滞在し、近世史の資料を収集した。
 ヨナスさんはスイスのチューリッヒ大学で日本研究や歴史を専攻し、日本には20歳のときに同志社大学に留学して1年間滞在した。学部を卒業してから半年ほど東京のスイス大使館で研修し、その後アメリカへ留学することになった。
 母国語のドイツ語のほかに、日本語、フランス語、イタリア語や中国語などを話し、日本語の古文書のくずし字も解読する。これまでの論文には「エメエ・アンベール:リベラリストの価値観と幕末日本」も。
 過去に興味を寄せるヨナスさんは、歴史をどう考えるか、そのとらえ方などについて聞いた。

過去を学ぶ意味語る


 ――歴史を研究すること、過去を考えることにはどのような意味がありますか?

 社会は移り変わるものだが、歴史自体もそれに合わせて現代文化の一部として変わっていく。歴史に対する今の見解は50年前の見解とは違っており、50年後も今のままではない。  人は過去のすべてを知ることはできないため、われわれが想像する過去は、歴史家が選択した部分からなる「継ぎはぎ」のようなもの。そして、われわれの注目を集める部分は、時代によって変わりつつある。たとえば、「ジェンダー・スタディーズ」が80年代から盛んになったことも、20世紀後半の社会的変遷を反映した現象だ。今に大切な問いかけの歴史を探ることによって、我々が生活している世界への理解を深めることが歴史学の目的といえる。過去に研究されなかった問いかけを、新しい観点から考えると、歴史が変わっていくことには終わりがない。


 ――今の文化を反映した歴史には、どんな例がありますか?

 アメリカでは80年代後半から環境史の存在感が強くなり始めた。人間による環境破壊がいよいよ明らかになり、今の人が関心を抱いたためだ。環境搾取の限りを尽くす物質世界、そして人間の文化に影響を与える環境変遷の歴史を考えることは、馴染みのある歴史観を覆す力を持つ。そして、一方的に進む近代化、または支配層の権力や富裕をメインとした歴史観が、ふと物足りないようなストーリーに感じる。
 19世紀の典型的な歴史観は、権力を持つ人を主人公とした。それはいわば王様中心の単純な歴史だった。その後、社会的な紛争を記録する社会史の研究が始まり、社会の変遷がより全体的に把握されるようになった。さらには焦点が帝国の住民や女性の行動力、あるいは少数(マイノリティー)の文化などへ移ることによって、人間社会の多様な経験が「歴史」として認められるようになった。同じように「環境」が歴史の軌道を決める力だったと考えれば、人間の思想、政治や「文化」の中心的存在が問い直される。


 ――ヨナスさんはさまざまな国へ留学した経験がありますが、なぜアメリカへの留学を決めて、どうして小笠原という小さな島を研究の対象に決めたのですか?

 ハーバード大学では日本を研究する人は多く、研究内容を話し合う相手が多いのが一番の利点かもしれない。東アジア研究所には35万冊の日本語書籍があり、中国語の本はそのほぼ三倍も所蔵され、東アジア以外では最も大きいと言われている。
 アメリカのゼミではよく学生が議論し、相違を考え合う機会が多い。学習環境は自由で楽しい。日本にいる時は研究の議論は主導教授や学術の伝統への忠義によって拘束される印象を受ける。若い人からすれば、そういう環境では議論に加わるハードルが高いし、違う観点や理論を紹介することもかなり難しい気がする。アメリカでは、むしろ自分の主導教授からの独立性を証明する機会が大切にされる。報告者独自の発見が重要視され、方法論が中心的だ。
 自分が小笠原諸島の歴史を研究しているのは、近代日本の植民地主義の萌芽が小笠原の歴史を発掘することで見えてくると思ったから。幕末は近世の終わりというより近代の暁だったのではないかと考えている。


 ――歴史のテーマの探究、議論は終わることがないのですね?

 歴史家の興味は、権力者側の歴史ばかりではなく、それ以上の深いところを求めるから、過去の情報を書き留めるだけでは現代の文化への貢献にはならない。言い換えれば、歴史は今の視点から研究され、今の人のために説明されるもの。今が変わると、「歴史」も変わる。
 江戸時代の歴史はそれ以後の時代を経て作られた。そのフィルターを問い直すことも大切。つまり今と過去の間に起こった歴史も意識しなければならない。歴史は前にも後ろにも上にも下にもつながっていて複雑。細部だけを詳細に見て歴史を理解しようとすると、見通しがきかないが、歴史の体系を把握すれば、当時の政治や思想などの仕組みが見えてくる。現代のさまざまな歴史観は現代を反映しているため、日本史を学ぶことは僕にとって今の日本を知るための勉強ともいえる。 (すべてヨナスさん自身の日本語です)