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第3514号  2012年(平成24年)3月2日 金曜日


基準月額4600円に 65歳以上の介護保険料 10.8%引き上げ 第5期介護保険計画 議会提出へ
保険料滞納者には罰則も
2014年 高齢化率36%、認定者数557人
● 「八丈ツアー人気」関西一円に? 町の観光貸切バス、3、4月は予約で満杯

● 離振法の拡充求め決議 総決起大会 全会一致で採択
● 青ヶ島と八丈の焼酎造り トカラの青年 地域おこしで視察
連載 縁(えにし)八丈力とは(11)「巫」の付いた戒名 土屋久氏
● 東西南北 どこに住んでいても
新会長に持丸友恵さん 連合婦人会が総会
● トコブシ種苗生産中止 都栽培漁業センター 感染症対策で
資源量激減 餌のテングサも
● フリージアキャラバン 新聞各社など訪問

● 助けを得ながら地域で暮らす 精神科医療の脱施設化めざす 高木俊介氏
● 「アシタバ盗らないで」 警察もパトロール強化 農家の被害、深刻
● 漁業調査船 新「みやこ」竣工 近く八丈島でも公開へ
● 上位 八高生独占 第35回八丈島駅伝大会に38チーム

● たんしん 3、4日 富士中作品展、大賀郷中学習発表会 4日 三原中学習発表会
● たんしん 10日 第4回八丈島&八丈富士エコジャーニーマラソン
たんしん 10〜17日 花村泰江展
● たんしん 11日 八丈島卓球大会小学生の部
● たんしん 11日 第17回ちょんこめまつり
● たんしん 11日 将棋教室

● たんしん 第29回少年少女サッカー大会結果



助けを得ながら地域で暮らす
精神科医療の脱施設化めざす



訪問型の生活支援を行う「ACT」(アクト)主宰の精神科医、高木俊介氏



 精神疾患のある人が住み慣れた地域で生活できるようにソーシャルワーカーや看護師、医師らがチームを組んで、訪問型の生活支援を行う「ACT」(アクト)を京都市で主宰する精神科医の高木俊介氏を招いて2月4日、精神保健福祉学習会「心の医療宅配便」(NPO法人八丈島ロベの会主催)が、保健福祉センターで開かれた。

 戦後の高度成長の流れの中、日本では精神病患者が「生産阻害因子」とされ、国策として病院建設が推し進められ、患者の施設隔離が行われた。対照的に欧米諸国では、この頃から精神科病院を解体し、地域医療への転換が始まっている。

 日本の精神科病院のベッド数は全病床の4分の1を占める35万床。先進諸国でも有数の精神科病院大国だ。「お金がなくなった今になって国は地域医療だと言い始めたが、日本の精神科病院は500床以上の大型施設で、つぶすことすらできない。病院側は赤字経営のためにスタッフは短期間で使い捨てにされ、患者とじっくりと信頼関係をつくる余裕もない」と、現状を指摘した。

 医療における「脱施設化」の流れは、精神科に限らないという。19世紀の終わりから20世紀にかけて、抗生物質などが開発され、医学は急速に発達した。その頃の医療は若い人の命を病気やケガから救うのが主な目的だったが、高齢者が増えた現在は、慢性病と向き合うのが主になった。

 「病院は急性期の対応や、より専門化した先端医療を担うようになる。慢性病の治療は食事指導や規則正しい日常生活を取り戻すことで、これは医者や病院ではなく、家庭や地域社会でこそやれる。年をとれば誰もが慢性病になり、障がいを持つ。それに対応できるよう人口分散を図り、地域が支援できる力をつけなくてはならない」。

 精神疾患もここ30年で大きく変化した。急に意味不明のことを叫ぶような緊張病性混迷状態などの症状は見られなくなった。あくせくした競争社会には精神病患者の居場所がなかったが、今は家のインフラも整い、引きこもるという選択肢もあるので、症状も穏やかになった。精神病も急性期医療よりも慢性期のケアがより重要になってきたという。

 高木氏が展開するACT(包括型地域生活支援プログラム)は、医師や看護師、介護福祉士など、医療と福祉のさまざまな分野のスタッフがチームを組み、積極的に地域へ出て、24時間365日、患者のケアや家族への支援・相談に当たる。

 現在、国内の精神科病院の入院費は年間約1兆4000億円。1ベッドに換算すると年間400万円。一方、ACTの地域ケアのコストは、一人当たり年間約100万円。これをみても、今後は脱施設化が大きな流れにならざるを得ないという。

 「大切なのは病気を完全に治すことではなく、助けを得ながら自立し、私たちと一緒に暮らせるよう社会復帰すること。慣れ親しんだ環境でここは安全だという安心感を与え、妄想や幻想を含めて自由に内心を吐露でき、そうした状況を受け止める絆をつくるのが大事」と語った。

 ACTは専門家10人がチームを編成し、契約した100人の患者を診るのが基本。「それ以上に広げるとうまくいかない。ネックの夜間対応は昼間のケアをしっかりすれば大きな支障にならないが、患者の安心感につながる電話相談は、当番制で24時間対応する」。

 病院や施設ではなく、住み慣れた自宅で暮らす意味は大きい。「施設は集中管理したいというケアする側の都合でつくられており、入居者の人生は尊重されない。グループホームもそうだが、ケアと居住を一体化するとケア側の管理する都合が入り込みがち。居住する場所は本人が支配できる自由な場として確保し、そこに外部から必要なケアをすることが症状の改善にも役立つ」という。

 重度の人もしっかりケアする。「軽度の人へのケアに手厚く、重度の人を支援してもお金が出ないのが、現行の自立支援法の問題点。重い人が生活できないと、軽い人は常に病気が悪くなったら下のランクに行くことにおびえながら暮らすことになる。重い人が大事にケアされていれば、軽い人は自分の力を発揮でき、ひいては自立にもつながる」と述べた。

地ビールにマイクロファイナンス事業も

 高木さんは昨年6月、将来的に精神障がい者の就労支援につなげたいと、京都市内で「一乗寺ブリュワリー」の地ビール生産も始めた。患者のいる家庭を経済面で支援するマイクロファイナンス事業も計画中だ。「地域で生きていくということは、人が地域で暮らし、悩み、年老い、そして死んでいくということ。それはどんな社会なのか、みんなで考えてほしい」と語った。  

 高木俊介氏 1957年広島県生まれ。83年京都大学医学部卒。日本精神神経学会で精神分裂病の病名変更事業に関わり、「統合失調症」の名称を発案し、02年に正式決定。04年京都市内に往診・訪問に特化した精神科クリニックを開設。「ACT‐Kの挑戦」(批評社)、「こころの医療宅配便」(文藝春秋)など著書多数。