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第3431号  2010年(平成22年)2月5日金曜日


● コウモリのすみか避け 設計やり直し 町庁舎建設用地内の防空壕に9頭生息 竣工5カ月遅れに
● プール改修などインフラ整備 国の2次補正で10事業
● 年内に末吉も受信可能に 地デジ完全移行まであと1年半 島内6カ所で総務省が説明会
● これ以上の減便は致命傷 観光立て直し急務 危機感の共有 議会が訴え 10月以降のANA利用率49.4%
● 総事業費5億円規模に 坂上保育園 設計変更で7700万円増
● 冬空の天体観測 土日に実施 参加者募集中 八高定時制の課外授業
● 万葉集を楽しむ(上) 第58回八丈島民大学講座 奈良県立万葉文化館長 中西進氏
● 空き目立つ公務員住宅 測候所無人化 学校統廃合で 有効活用が行政課題に
● 保護司が交流 久喜、八丈両支部
● 水産・農林 研究成果発表会 21、22日 農水センター八丈事業所
● 声(投書欄) ゴルフ場整地に一考を
● 短信 三根、大賀郷、末吉小学校学芸会

● 短信 P連作品展、父母教職員の集い「しんかい6500で未知なる海へ潜る!」
● 短信 芝税務署出張申告相談と受付
● 短信 第51回白浜会ゴルフコンペ結果




万葉集を楽しむ
八丈島民大学講座で 奈良県立万葉文化館長 中西進氏







         恋人とは、『愛する人で、会えない人』

 万葉研究の第一人者で奈良県立万葉文化館長の中西進氏を招き、第58回八丈島民大学講座『万葉集を楽しむ』(同実行委員会主催)が1月23、24両日、七島信用組合2階ホールで開かれた。『万葉集』には、天皇から庶民にいたるさまざまな身分の者が詠んだ4516首が収められているが、その1%にあたる中西氏自選の『ベスト40首』が講演のテキストだ。「万葉集には、声に出して読むと気持ちのいい歌がたくさんあります」と話す中西氏は参加者といっしょに音読し、万葉人の恋愛観、自然観、生き方、暮らしや旅などをテーマに、平易な言葉とユーモアに富む語り口で、古代人の奥底に流れる価値観や生命の営みを説いた。

(1) 上野 安蘇の真麻群 かき抱き 寝れど飽かぬを 何どか吾がせむ

(2) 吾が恋は まさかもかなし 草枕 多胡の入野の 奥もかなしも 

(3) 玉津島 磯の浦廻の 真砂にも にほひて行かな 妹が触れけむ

(4) 小竹の葉は み山もさやに 乱げども われは妹思ふ 別れ来ぬれば

(1)巻一四の三四○四 上野=群馬県 安蘇=地名 真麻群=麻を栽培して布を織り朝廷に献上している処 かき抱き=(刈り取った束を)抱える 飽く=満足する (2)巻一四の三四○三 まさか=現在 かなし=かなしい 草枕=旅の枕詞。旅寝 多胡=地名 入野=山裾に入り込んでいる野原 奥=将来 (3)柿本人麻呂の歌集・巻九の一七九九 玉津島=和歌山県和歌浦 浦廻=湾曲している海岸 にほふ=赤などの鮮やかな色が美しく彩ること 妹=妻。恋人 (4)柿本人麻呂・巻二の一三三 さや=ざわめく 乱ぐ=不吉な音を立てる
 
 愛の歌が共有するのは、会えないことでつのる恋人への思慕の情だ。愛は英語の『miss=いないことを寂しく思う』と同義で、無いものを求めること。無いから乞う。乞うは恋。恋人とは、『愛する人で、会えない人』を意味する。万葉集には、会えないけれど会いたいと嘆く歌が1000首ほどあるという。

 (1)は労働に従事している人の一首。『女性を抱いて寝ているのだけれど満足しない、どうしたらいいのだろう』と歌う。愛することへの永遠の願望、愛の本質をつかもうともがく姿を浮き彫りにしている。

 (2)の『かなし』は、人をいとしむ感情。それは悲哀以外の何ものでもない。「最も大事なものに対してかなしさは極まる。その『かなし』という感情を味わってほしい。かなしい段階まで愛そうとする激しい生命力が、万葉集にみるべきもののひとつ」。万葉人の愛の歌は、そういう境地にまで到達している。

 (3)は『亡くなった愛する人が触れたであろう海岸の砂で、身体をあざやかな赤に染めてほしい』という歌。灰色の砂で赤く染まることは現実の世界にはないが、人を愛することで経験できる。

 (4)は柿本人麻呂の歌。赴任していた石見の国(島根県)から、妻と別れ都に帰る途上に詠んだ。愛する人と一緒にいたいという気持ちで、死への誘いにあらがう。「死さえも克服するのは愛」ということを知らされる。 

 中西氏は「愛には、別れているという絶対条件がある。万葉人の愛の本質を語る心は、今日も存在意義を失わない。同居婚により失ったものは愛である、と思いたくなります」と語った。